【後編】システムコーチングを職場でどのように活かしているか?/ パナソニック株式会社 オペレーショナルエクセレンス社
組織内チームコーチ養成コースに参加されたパナソニック株式会社 オペレーショナルエクセレンス社 礒貝あずささん、戒能直美さんと、その上司である室長の前川督之さんは、このコースでの学びを職場でどのように活かしているのでしょうか。
【前編】なぜ「組織内チームコーチ養成コース」に参加したのか?
【中編】「組織内チームコーチ養成コース」での学び
【後半】システムコーチングを職場でどのように活かしているか?(今この記事を読んでいます)
【後編】システムコーチングを職場でどのように活かしているか?
目次
システムコーチングの知恵やワークで「生の声」が出やすく
―システムコーチングを職場でどのように活かして、どんな変化が生まれているかを聞かせていただけますか?
前川さん:インタビューの初めに礒貝さんから説明がありましたが、私たちは言ってみれば組織開発の社内コンサルみたいなことやっています。困っている事業場からの依頼を受けて、第三者的に入って、その事業場の人たちと一緒に組織開発を進めていきます。
多くの場合、まずはトップ層の一つ下のレイヤーにいる「幹部チーム」と一緒に取組み始めます。そのチームが自分たちの現状を受け入れて、この方向へ行こうというビジョンを作ったりするんですが、そういうところにシステムコーチングの知恵やワークを使っています。
―例えば、どんな知恵やワークを使っているんですか?
前川さん:例えば、最高の未来を描く「ハイドリーム」や最悪の未来を描く「ロードリーム」です。会社の中では「夢」ってあんまり描かないものですよね。今の現状に捉われて、最高の可能性も描かないし、悪いところには目をつむるし。ハイドリーム、ロードリームを描くと、「本当にそこに行きたいよね」とか「そこに行きたくないよね」という生の声が出てきやすくなります。
―素晴らしいですね。では、システムコーチングを使って、「こんな喜びがあった」「こんな苦労があった」というのは皆さんありますか?
場の空気が変わる場に立ち会い、システムコーチングの効果を実感
礒貝さん:以前、「メタスキルの輪」というワークをすることがありました。「メタスキルの輪」というのは、1つの輪の中に関係性において大事な7つのメタスキル(心の態度・姿勢・哲学)を描き、その輪の中を歩きながら言葉の意味をイメージの中で1つ1つ味わってもらうワークなのですが、女性8名のチームで実施した際、ひとりの人が「本気」というメタスキルの場所に立ったんです。
その時のインパクトがすごくて、場の空気がガラッと変わりました。まだツールの素晴らしさをわかってないうちに、最初に体感した出来事だったんです。そういう効果がある場面に一度立ち会うと、自分でやる時にもシステムコーチングが効いていると実感します。自信につながりました。
戒能さん:喜びや苦労と言われて思い出すのは、前川さんと一緒に支援したある工場のことです。私たちはこの工場が縮小されることを事前に知っていたのですが、まだみんなは知らなくて。潰したくないから、みんな前向きに何をするべきかという話をしていて、実情を知りながら関わるのがすごくつらかったです。そうした中でも前向きに考えていけるように、しっかり「寄り添う」というメタスキルを使いながら、あの場にいました。
前川さん:喜びは色々あるのですが、パッと出てきたのは、事業場の人たちが自分たちの可能性を信じられた時というか、自分たちが心の底から「本当にここへ行きたいんだ」「自分たちはこんな存在なんだ」と、そこにいる人全員で気づく場にかかわるのは大きな喜びですね。
と同時に、そこに行く一歩手前に、「今の自分たちを受け入れる場面」って絶対あるんですね。頑張っているけれども成果が出ないことや、どこか傷ついている人たちがいるということも含めて、「自分たちは今こんな状態にあるよね」っていうことを受け入れる感じというか。そこを乗り越えて、「みんなで前進しよう」というところに立ち会った瞬間は、すごく良いことしているな、良いところに立ち会えているなと思いますね。
先日、事業場支援では何を「支援」しているんだろうという話をしていて。最近私自身が思っているのは、その組織が、動き出す可能性を自分たちが持っているということを受け入れるのも含めて、当事者自ら「動き出すこと」を支援しているんだなと。どこへ行くかは支援する私たちが決められることじゃないし、「自分たちが自分たちの可能性を信じて動けるんだ」ということに気付くのを支援しているのではないか。そういうことがこれからもできたら良いいいなって思います。
――今後システムコーチングを使って、どのように組織開発をしていきたいかですか?
良いところも悪いところも理解しあい、信じあえるチームを増やしたい
戒能さん:先ほども少し話をしましたけれども、部下の気持ちがわからず苦しんでいる課長をサポートしたいと思っています。チームの関係性をより良くしていくというところにシステムコーチングの知恵を使って、どんどん良いチームを増やしていきたい。それこそ私たちみたいなチームを増やしていきたいです。
――私たちのようなチームというのは、どんなチームですか?
戒能さん:お互いの良いところも悪いところも理解しあえて、尊重しあえているからこそ、信じあえているチームです。
礒貝さん:私たち、やりとりに何も懸念や不安がないんです。しょっちゅう意見はぶつかりますが、意見をやりとりしても大丈夫なんだ、より良いものを皆で作っていけるんだっていうのが安心してできています。そういうチームだと、より成果も出やすいと思うんですよね。このチームは、ぱっとできあがったわけではなく、この4人が集まって一緒に作り上げてきた実感があります。今はもう何を言っても大丈夫、何をやっても受けとめてもらえると思っています。
――改めて、システムコーチングをおこなっていく上でのエッジ(変化していくことへの抵抗、変化を妨げる障壁)は何かありますか?
システムコーチングは新しい眼鏡みたいなもの。使う時にエッジが出る可能性も
礒貝さん:私達がしていることを言語化するのが結構難しくて、説明しにくいなと思っています。システムコーチングを全く知らない人にお話しするにしても、どのような効果があるのか、どんなアウトプットがあるのかと聞かれた時に、言葉にできないものが結構あるんです。
それだと会社の組織としては受け入れにくいので、言語化しないといけないのですが。一方で、そこを言語化したくない自分もいて。言語じゃない効果もあることを、あえて言いたくなるなと思いました。
前川さん:システムコーチングの知恵は、組織責任者にとって本当に新しい眼鏡みたいなものになりうると思っています。世間一般的な組織マネージメントや数字やオペレーションではない組織の見方と言うか。その眼鏡を持って上手く行動できると、本当に成果が上がるし、エネルギーも湧いてくるし、方向性もあう。使えると良いなと思いますが、その時に出そうなエッジが2つあると思っています。
1つは、今までその眼鏡をかけ慣れていないから、かけると違和感があるし、気持ちが悪くてあまりかけたくない。もう1つは、うすうす問題点に気づいているけれども、はっきり見えてしまうと対処しないといけなくなってしまうから、見たくないというケース。
それは痛みが明らかになることかもしれないし、余裕がない中で見えたらやらなければいけなくなるという。だから見たくないというのもある気がするんですね。それもエッジになりそうだなと思いますが、そこを乗り越えていって欲しいという思いがあります。
今日話してみて、改めてシステムコーチングは良いものだし、可能性がすごくあると思います。システムコーチングを使うことが目的じゃなくて、やはり現場に届けたい、より良い組織づくり・関係性づくりにつなげたいなと思いました。
【編集後記】
インタビューではバリバリの関西弁で「なんぼでもしゃべれるで」と話して下さった礒貝さんと戒能さん。上司である前川さんを「たぁぼー」と呼び、率直に何でも言い合える関係性だということが伝わってきました。「まずはやってみましょう」という軽やかなメタスキルで人と組織をサポートする皆さん。組織内チームコーチとして、ここからますます活躍されることを祈っています。
(ORSCCのライター:大八木智子)
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