今こそ社内チームコーチの出番です

 5. チームコーチングの事例

 1. ヒアリング:
チームの課題は多様なので、まずはリーダーにヒアリングをして、そのチームのありたい姿と課題を聞き取ります。メンバーの皆さんにはアンケートという形でヒアリングをします。

2.企画:
コーチがヒアリング結果を経て、チームのエッジ(ありたい姿に向けて乗り越えなければならない課題)を見立てコーチングプランを立てます。社内ではわかりやすいように3~4時間×3回のセッションを基本として紹介します。

コーチングセッション:
チームの課題が「メンバーがもっとお互いに積極的にコミュニケーションをとって、自分の成果だけでなくチームの目標に向かって主体的に行動してほしい」といったような場合、例えば、コーチング計画として以下のような3回のセッションを企画します。

【Day1】 
まず互いへの興味関心を喚起するために、メンバー一人一人の仕事に対する向き合い方のストーリーを聞きあう → 学び、気づきをチームとしての行動につなげる

【Day2】 
共通の目標に対しての当事者意識を醸成するために、メンバーの一人ひとり立ち位置を明らかにし、目標に対する意見を聞き合う → 共通の目標に向けてのチームの行動につなげる

Day2では、例えば以下のようなツールを使います。

ツールの例3:コンステレーション
象徴としての「チームの目標」を紙に書いて部屋の真ん中に置き、それに対する自分の立ち位置を表明する

効果:目標に対しての自身の立ち位置を表明することで、目標を自分事として考える機会を持ち、結果として自分はこの目標を達成するチームの一員なんだという当事者意識が醸成されます。また、自分の意見、他人の意見、そしてチームの意見に自覚的になり、互いの違いへの理解が深まり、多様性の尊重が促されます。

【Day3】 
チームが難関を乗り越えるために、これまでのチームの中での目に見えない役割をお互い認知し、目標に向かって新たな役割をそれぞれが選択する → コーチング以降のチームの行動につなげる

振り返り:
セッション終了後は、リーダーと振り返りをして、事前に話したありたい姿の進捗度合いを明らかにして、その後の自走プランにつなげます。

6. システムコーチングから導き出した、問いの答え

かつては社内に、そんな役割の無かった「組織やチームに対して、その関係性を明らかにし、その可能性を切り拓く」が、今、私のメインの業務になっております。社内で唯一のプロフェッショナル職を担い、年に60件以上の相談が寄せられます。週1ペースで新しい相談が来るということになります。

なぜ、このタイミングで相談してくれたんですかと聞いてみると「悩んだときにまゆみさんの顔が思い浮かびました」とか、「知り合いのチームが劇的にいいチームになったと聞いて」とか言ってくれます。「自分がメンバーだった時にやってもらって、そこからチームが上昇軍団に変化しました。自身がリーダーになったら、絶対自分のチームでもやるって決めてたんです」という2世マネジャーも出始めました。

これまで多くのチームで結果を出してきたことが、信頼の土台になり、主に口コミで社内に広がってまいりました。”結果”とは、リーダーが自ら決めたゴールの達成です。

組織開発の結果を最も実感でき、それをその後に活かしていくのはその組織のリーダーだからです。通常、組織開発の結果は見えづらく、時間がかかると言われておりますが、2~3か月で目に見える変化を呼び起こすことができます。

このことから、冒頭の問いに一定の答えが導き出されます。


 問い1:人材育成部門の施策「研修」は、ビジネスの成果につながっているのか?

ビジネスの成果は、その組織の長に指標を決めてもらい、その評価もしてもらう。何がどうなったらこの施策が功を奏したと言えるのか、施策を始める前に設定し、実施後に振り返り、成果の達成度合いと今後の積み残しを明確にして、リーダー自らが次の打ち手につなげる。自ずと成果に向かって進捗していく。
これまで、この成果に対する指標の期待値に対しての達成値は平均100~120%程度です。


問い2:自身の未来を描くだけではマネジャーたちはエンジンがかからない?

組織の長としての責任感と、部下の成長を願う気持ちは、誰がなんと言っても素晴らしい。(なのに誰にも褒められないのがマネジャーの辛いところ) そんなマネジャーの話を十分に聞き、味方になるのが社内コーチの大事な役割チームに変化を起こすために、社内コーチが最も大事なのはリーダーの信頼を得ること。900超のマネジャーに認識してもらい、年60件の相談をもらえるのは、その信頼の証になるのでは。

会社が必要であると決めた組織ではなく、自ら手をあげた組織のみにチームコーチングをしていることに、疑問を持たれることもあります。

自ら自組織を良くするために一歩踏み出すマネジャーが称賛される会社であってほしいと私は思っています。「やっぱ人でしょ」というのは、わが社の社長の口癖です。人や人間関係を良くすることで成果につなげているリーダーが評価されるためには、制度や仕組みで評価するなど、まだまだ、人事部門ができることはありそうです。


 問い3:研修で、意識変革を起こした受講者たちが自組織に戻ると萎えてしまう?

組織内の全員が共に同じタイミングで意識変革を起こすことによって、現実を変える行動がスピードアップする。その共通の成功体験がさらなる変革を生み出す。
個人商店とか、自分の仕事しか考えていないと言われるのは、それをする必要があるから。組織で共に考える必要があれば、その一員としての思考が動きだします。

7. 今こそ意図的にチームをつくる時

 これまで日本の企業は、共に机を並べて働く中で、チームを作ってきました。そしてチーム作りは多くの場合、現場のリーダーが担ってきました。働き方が大きく変わる今、共に働く時間の積み重ねで信頼関係が作れない環境にあり、多くのリーダーが悩んでいます。今こそ意図的にチームを作る必要があり、社内チームコーチの貢献が求められています。

リーダーたちの痛み、組織の閉塞感、若手のフラストレーションに寄り添い、もともとある個々のポテンシャルを集団の力に変えていくのがチームコーチだからです。